グランドピアノにしてくださいとピアノの先生に言われたら。アップライトピアノとの違い。

・グランドピアノっていくらするんだろう
・そんなスペース家にない
・今でさえ苦情にひやひやしてるのに
・うちの子供はピアニストにはなりません
・なぜグランドピアノである必要があるのか

コンクール全国大会出場の生徒さんがいる教室で言われます。中にはグランドピアノを持っていないと習えない先生もいます。こういった先生方は、生徒さんと保護者の方1人1人に対してなぜグランドピアノが必要なのかを丁寧に説明しているはずです。そうでないと「あの先生はすぐにグランドピアノを薦める」という悪いイメージが付いてしまいます。

ただ中には“コンクールのため“とだけ説明している先生もいるようで、調律の時に「なぜコンクールの結果のためにグランドピアノが必要なのかがわからない」と相談を受けることも多々ありました。
グランドピアノとなると大きい買い物では済まないですよね。買い替えるのであれば100%納得したいです。

本記事では、「コンクールで良い結果を残すためにはグランドピアノが必要」と先生が言う理由について、調律師の視点からまとめています。
グランドピアノのデメリットや、自宅ではアップライトピアノで練習しているピアニストも紹介していきます。

4000文字弱の長い記事になっていますが、コンクール関係なくグランドピアノへの買い替えを検討されている方、アップライトかグランドピアノかで迷っている方には特に役に立つ記事かと思います。

なぜ先生はグランドピアノを薦めるのか

1番の理由はコンクールで使われるのがグランドピアノであること。そして全国大会出場者及び上位入賞者の多くが自宅ではグランドピアノで練習しているということです。
これについて実際のデータは見つからないのですが、聞くと大体皆さんグランドピアノを持っています。大きさは違えど同じ構造のピアノで練習した方が本番でも同じように弾けるという考えですね。

では同じピアノでもグランドピアノとアップライトピアノで何が違うのか、弾き心地や音がどう違うのかについて説明していきます。

グランドピアノとアップライトピアノの違い

左ペダル

コンクールに出る上で最も決定的な構造の違い、それは左ペダルです。ソフトペダルと呼ばれているペダルですが、グランドピアノとアップライトピアノでは根本的に構造及び効果が違います。
詳しくは別の記事に書きますが、左ペダルを踏んだ時にグランドピアノは音色だけが変わるのに対して、アップライトピアノでは音色はそんなに変わらずタッチが軽くなってしまいます。これは上位を目指す上では大きな弊害になるそうです。

タッチ(弾き心地)

鍵盤の弾き心地に影響する構造上最も違う部分はハンマー(弦を叩く部品)の動く方向です。グランドピアノの場合は鍵盤を下に押すとハンマーが上がる、いわゆるシーソーと同じ動きになっています。
アップライトの場合、弦が縦方向に張ってあるので、鍵盤を下に押すとハンマーは前方向に動きます。つまり鍵盤のシーソーの動きに対して、方向が変換しているという事になります。
物理的に見るとグランドピアノの方が自然な構造になっており、よって連打などもしやすくなっています。

音量

音量はグランドピアノの方が圧倒的に大きい音が出ます。これは弦の長さや響板の広さによる部分もありますが、1番の理由は弦や響板がむき出しになっている事です。アップライトピアノは箱で囲まれているため、直接音は聴きづらい構造になっています。
この違いはピアニッシモのような小さい音にも影響します。弱い音もグランドピアノの方が聴きやすいかと思います。

ソステヌートペダル

このペダルはコンクールに関わらず使う事はほぼないと思いますが、真ん中のペダルの事です。特定の音だけ持続させる効果があります。アップライトピアノでもこの機能が付いているピアノもありますがやはり使うことはまずありません。ですが、一般的にはアップライトピアノにはない機能のためここに書きました。

有名ピアニストは自宅ではアップライト

ここでは有名ピアニストを2名上げます。

ラファウ・ブレハッチ

2005年のショパンコンクール優勝者です。彼は2003年まで自宅にはアップライトしかなかったようです。この年の浜松国際コンクールで2位になり、その賞金で初めてグランドピアノを買ったそうです。(ウィキペディアに書いてあります)。

イェルク・デームス

ウィーンの巨匠ピアニストです。楽器コレクターとしても有名なピアニストですが、ウィーンの自宅ではベーゼンドルファーのアップライトピアノでいつも練習していました。たくさん練習するのにグランドピアノだと耳が疲れてしまうという事。大切なのはタッチよりも音色が豊富で音楽が表現できる楽器かどうかで、このベーゼンドルファーは最適だったというのが理由だそうです。

ブレハッチについてはメーカーはわかりませんが、デームスに関してはそこら辺のグランドピアノよりも音色の変化がはるかに敏感なアップライトピアノでした。ブレハッチもおそらくそうでしょう。
ここでの大切なポイントは全てのグランドピアノが全てのアップライトピアノよりも優れているわけではないという事です。デームスの場合でいえばそこら辺のグランドピアノが自宅にあっても触りもしなかったはずです。
ただこの2人に共通する部分として、普段からグランドピアノを弾く機会がたくさんあったという事を忘れてはいけません。

グランドピアノのデメリット

重量とサイズ

なんといっても重量ですよね。家に置く大きさのグランドピアノの場合、サイズによって違いますが300~450キロくらい。これだと床が心配になりますよね。そしてアップライトピアノより圧倒的に場所をとります。形状の関係でデッドスペースもかなり生まれるため、ピアノの2回りくらいのスペースが必要になります。

音量

音はかなり大きいです。買い替えるとなった時の1番の心配ごとかもしれません。屋根を閉めてもピアノの下方向に向かって音が出ているので、防音対策をしっかりとする必要があります。

お金

移動から調律までアップライトよりもお金が掛かります。
調律は2~3万円くらい(アップライトは15000円くらい)です。

防音対策もアップライトに比べてしっかりする必要があります。コンクール上位を目指すならなおさらです。グランドピアノ用防音対策グッズについては別記事にまとめます。

そしてなんと言っても本体の値段です。中古を探せば安いものもありますが、コンクールで良い結果を目指すとなるとあんまり状態の悪い物は買いたくないですよね。最低でも120万円は覚悟しておかないといけません。ちなみにこの120万円は価格としてはかなりお得な方です。

レンタルという方法

グランドピアノをレンタルされている方も少なくないのではないかと思います。もちろん運送費や調律代などは掛かりますしレンタル料からピアノの状態など様々ですが、これも1つの選択肢です。音楽大学に入ってプロを目指すわけではないという方がよく受験期間手前までレンタルされています。

練習部屋をレンタルするという方法もあります。1か所ではなく複数の楽器店などで練習されることをオススメします。好きな時に弾けるわけではないですが、短時間で集中して練習できる事や、様々なピアノの違いや場所の違いを感じながら練習できることはコンクールのためにはとても良い方法と言えます。

今あるアップライトピアノをどうするのか

買い取ってもらう

買取業者さんに見積もりをしてもらうと大体の金額がわかります。場合によっては値段がつかなかったり、引き取り料を負担することになります。
どれくらいの金額になるのか知りたいという方のための記事はこちらです。

もっておく

自分が初めて弾いたピアノだったりするとやっぱり思い出がありますよね。スペースが許せばそのまま置いておくというのもありです。

サイレント機能を取り付ける

夜弾くピアノのためにサイレント機能を取り付けるという選択肢です。お金はかかりますが、思い出のピアノを持っていても弾かないなぁという方にはオススメです。特にコンクール前には夜も練習したいですよね。そんな時のためにはオススメの方法です。

さいごに

ここまでグランドピアノを買ってくださいとピアノの先生に言われたら。というテーマについて書いてきました。

コンクールの上位を目指すというのはお子様にとって良いモチベーションになりますし、うまくいけば貴重な成功体験になるかと思います。そのためにグランドピアノが必要だという先生の意見にも納得がいきます。
そして全体的に見ると、やはりグランドピアノがあるとコンクールに出る出ない関係なくお子様は進んで練習しているように思います。(調律師さんはピアノを見ればどれくらい弾いているかがわかります)。
ですが現実的にはグランドピアノを家に置くってなかなか難しいですよね。
それぞれのシチュエーションに合った選択肢があるので、この記事が少しでもお役に立てば嬉しく思います。


以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん