アップライトピアノのサイズによる性能の違い~背の低いピアノの方が良い?~

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
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アップライトピアノは背が高い方が値段も高いし性能も良い!と思っている方、多いのではないかと思います。ただ現実には背の低いピアノの方が優れている面もあり、としさんも親戚からアップライトピアノを探していると相談を受けたら高確率で背の低いピアノを薦めます。金額は関係ありません。

本記事ではアップライトピアノの背の高さによる音とタッチの違い、背の低いピアノを薦める理由についてまとめました。

ただ最初に書いておきますが、音に関しては正直なところ好みの問題です。個人的には背の低いピアノの方が好きというだけです。
この記事がアップライトピアノを探す上での参考になればと思います。
オーストリアでの人気のある背の高さについても最後に少し触れますね。

背の低いピアノの優れているところ

ピアノの中で最も大切な次高音(メロディーライン)から上の音域が背の高いピアノよりも伸びるし歌う。

ピアノ全体の音量のバランスが良い。

タッチが実はグランドピアノに近い。

この3つのポイントについて背の低いピアノ、高いピアノを比べていきます。

一般的なイメージ

背の高いピアノの方が良いと言われる理由は“弦が長いから”、または“響板の面積が広いから”のはずです。

確かに間違っていませんしイメージもしやすいですよね。グランドピアノであればこれで正解です。

ですが、アップライトの場合は音への作用は少し変わってきます。

高音の伸び。高い音のためには狭いスペースが必要!

まずグランドピアノを上から見た形を思い浮かべてください。高い音の方がくねっとなっていますよね。これはわざと高音の響板の面積を狭くしています。

なぜかというと、高い音、すなわち細かい振動数の音は狭い空間で初めて持続するという特徴があるからです。

アップライトピアノは四角い形をしているため、背が高くなればなるほど高音の響板の面積も広くなっていきます。徐響板と呼ばれるわざと高音側の響板を狭くするものも付いているのですが、楽器そのものが四角い箱になっているため背の低いピアノの方が物理的に高い音は持続しやすい作りになっています。ヴァイオリンとチェロを想像してください。チェロを改造してヴァイオリンと同じ長さの弦を張ったとしても、ヴァイオリンのような高音は鳴らないはずです。

ピアノ全体の音量のバランスについて

先ほど背の低いピアノの方が物理的に高い音が伸びると説明しました。

では中音と低音はどうでしょう。特に低音に関しては背の高い、つまり弦が長く響板が広いピアノの方が迫力のある大きい音が出ます。それに比べると小さいピアノの低音はどうしても劣ります。

ただ楽器全体のバランスとして考えた時には、背の高いピアノは低音だけ大きい音が出て肝心のメロディーラインの音がすぐに消えてしまうので、バランス良く弾こうとするとどうしても右手を強く、または左手は弱めに弾かないといけません。

この点では背の低いピアノの方がグランドピアノに近い感覚で演奏することが出来ます。

ただ迫力のある低音がどうしても欲しいという方や深い中音が好きという方もいるので、そういう方には背の高いピアノの方がオススメです。

タッチが実はグランドピアノに近い。キャプスタンという部品。

これはおそらく多くの人が“え?”ってなるのではないかと思います。

注目すべき点はキャプスタンという部品です。鍵盤の先の普段見えない部分に付いている部品です。この部品は鍵盤とメカニック部分の間にあるとても大切なパーツです。

この部品、実はグランドピアノと同じものが使われているのは背の低いピアノです。理由は簡単スペースが狭いからです。逆に背の高いピアノには少し長めの棒が付いています。この棒を調整することによってタッチの軽さを調整できるというメリットはあるのですが、物理的な動きに注目するとこのキャプスタンはグランドピアノと同様になるべく鍵盤に近いところにあった方が鍵盤をコントロールしやすいです。

オーストリアでのアップライトピアノの背の高さ事情

オーストリアでは圧倒的に背の低いピアノが普及しています。

つい先日久しぶりにヤマハのU1という機種を調律しました。アップライトピアノを探されている方は、U1(121cm)、U2(127cm)、U3(132cm)の違いを目にしたことがあるはずです。

このU1を調律した時まず最初に思ったことは、「今日は珍しく背が高いピアノだなぁ」です。

オーストリアだけでなくヨーロッパで人気のあるサイズは117cmです。日本だと背の低い部類に入るU1でさえ、オーストリアでは背が高いピアノになります。

さいごに

ここまで背の低いピアノの良さについて書いてきました。こちらでは112cmのピアノも普通に普及していて、このサイズでは信じられないくらいの低音が出るメーカーのものもあります。

1つ注意点としては、背の低いピアノの中にはドロップアクションというメカニックが使われているものがあります。このドロップアクションのピアノは調律調整に普通のピアノの少なくとも5倍は時間が掛かります。110cmくらいのピアノで以上に安かった場合、このアクションが入っている可能性があります。ピアノ本体が安くても調律代だけで大変なことになりますので気をつけてください。

以上になります。

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん