ピアノ調律師になるには【リアルな話】

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
横浜を拠点にピアノ調律師やってます♪YouTubeもがんばってます!

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調律師を目指そうと思って調べても現場の話や業界事情などはなかなか見つからないと思います。また仕事の内容は本当に様々です。

本記事では、ピアノ調律師に興味がある方のために僕の経験や調律師の友人から聞いた話を元にこの職業のリアルな話をまとめました。かなり長い内容です。あくまでも個人的な話になりますが、調律師を目指すか迷われている方、実際に専門学校に通っている方には参考になるかと思います。

↓こちらの動画でも調律師という仕事について話しています。

ピアノ調律師という仕事

まずピアノ調律師という仕事のイメージと現実についてです。
僕も昔そうだったのですが、調律師=芸術的センスが必要な職人みたいなイメージがありました。これも間違ってはいないのですが、現実には立派なサービス業です。他の職種と同様に相手がいて、その相手の要求に対応するのが仕事です。ですので職人気質と同時にコミュニケーション能力も求められます。
ただ、人と接するのが苦手という方でも技術さえあれば活躍できるジャンルもありますし、実際に仕事の中でピアノを通して他人とコミュニケーションをとる内に、苦手が克服されたなんて話も聞いたことがあります。

仕事の種類

ピアノ調律師と言ってもその仕事の内容は多岐に渡ります。そして内容は同じでも会社によって仕事のやり方は様々です。これについて1つずつまとめていきます。

ピアノ調律

これは大体皆さんが想像している通り、一般的なピアノ調律師の仕事です。ピアノが置いてあるところに出向いて音を直す作業です。コンサートチューナーもここに含まれます。CD録音のような0.1ミリのズレも許されない現場から、音が出るようになればいいレベルまで要求は様々です。一般家庭のピアノの調律で比べても、スピード重視で数多くのお宅を回る会社と、値段は高いけども1台にじっくり時間を掛ける会社などがあります。”調律”の仕事はほぼピアノを弾く相手がいるので、技術はもちろんコミュニケーション能力も不可欠です。

ピアノ修理

修理工房での仕事になります。ピアノの細かい部品を交換したり、約230本ある弦を全て交換したり、はたまた割れた響板を修復したりと作業内容はやはり様々です。会社によっては特定のメーカーのみを扱っていたり、コンサートホールのピアノがほとんどの工房もあります。完全に修理工房としてやっている会社から、楽器店の中に調律部門と修理部門がある会社も。
調律の仕事と比べるとピアノを弾く人と接することが少ないかもしれません。
これからは高級ピアノの修理が出来ないと仕事が少なくなる時代が来るのではないかと個人的に予想しています。修理を身に付けておけば怖いものなしです。

ピアノ塗装・クリーニング

ピアノの外側、いわゆる見えている部分の塗装の仕事です。
ピアノの修理工房と一緒になっている事が多いです。木が欠けていたりした時には当然補修したり、あるいは新しく作り直さなくてはいけないため、塗装の技術はもちろん木工技術も必要です。
中古ピアノを販売する時には見た目も大切です。ピアノを新品のごとく磨き上げる仕事がクリーニングです。
これもやはりコンサートホールに置いてあるようなピアノから、これから中古で販売されるピアノ、引っ越しに伴ってピアノをキレイにしたいという人からの依頼などそれぞれ求められるものが変わってくるそうです。
この塗装に関しても極めている方の仕事は”芸術”と言っていいほどに美しい仕上がりで思わず息をのみます。

ピアノ運送

ピアノを運ぶ仕事です。ピアノという楽器は非常にデリケートで引っ越し業者が運ぼうとしてトラブルが起きるなんて話は少なくありません。ピアノ専門の運送会社があり、この方々のおかげであの重たく繊細な楽器が家や会場まで運ばれています。
ピアノを運ぶ仕事は決して力だけが必要なのではなく技術と知識、そして豊富な経験によって支えられています。

ピアノ製造

僕が昔働いていたシュベスターピアノでは少人数で大きな機械を使わずピアノを製造していましたが、今はもう新しいピアノは製造されていません。
今ピアノ製造で大きな会社と言えばヤマハとカワイになります。
10年くらい前に聞いた話では、中国からピアノのパーツを仕入れたものを日本で組み立てて販売している会社もあります。これも製造の部類に入ると思われます。

仕事の種類まとめ

以上になります。
調律の専門学校に行きながら、自分がこの中の何をメインに仕事をしたいのか考える必要があります。もちろん仕事をしながら考えは変わっていくものですが、とにかく最初の一歩を踏み出すためにも仕事のジャンルについては知っておきましょう。
どのカテゴリーでも1流になると求められる技術、知識、経験は簡単に手に入るものではありません。こういった意味でも早い段階で自分がやりたい仕事を選ぶ事は重要になってきます。

勤務時間

働く時間や休日についてです。
先ほどの仕事の種類によっても変わってきますが、やはり土日でないと家にいませんという方からの調律依頼があった場合や、そもそもコンサートは週末や祝日が多いですよね。こういった理由から土日と祝日は仕事という人も多いです。
主にピアノの業者を相手にしている仕事の方は週末がお休みになると思います。
僕が働いていた会社でいうと、ピアノ工房のエスピー楽器は日曜と隔週の月曜が休日で朝8時~17時まででした。
横浜の働いていた楽器店では火水が完全にお休みで就業時間は9時~18時でした。この会社は誕生日有給があったり、5年以上勤めると翌年から毎年30日連続有給というものがとれるというヨーロッパのような革新的な制度がありました。

勤務時間(リアル)

手に職系の仕事は日々技術を磨いていかなければなりません。美容師や料理人と同じように就業時間の後が技術を磨く時間になります。もちろんこれをしなくても会社は雇ってくれますし給料も払われます。ですが、一線で活躍している人たちはこれを苦もなくしています。
ブラックと言えばそうですが、調律師に限らず”手に職系”のリアルかと思います。
これが絶対に嫌だという方は調律師になってもあまり良いことはないと僕は思います。

年齢

どのサイトにも書いてあるとは思いますが、若ければ若いほどいいです。
なかには30過ぎから調律を勉強し始めて活躍されている調律師さんもいます。そういう意味では努力次第かもしれません。
ですがヨーロッパでは専門学校に16歳から通えるようになっていて、1流のコンサートホールで調律している人が20代なんてこともあります。
なるべく早いうちに始めた方が効率よく調律を学ぶことができるかと思います

お金の話

「ピアノ調律師 収入」で検索すると、平均して比べるとサラリーマンより低いと書いてあります。これは本当です。ですが成功して活躍する事が出来ればサラリーマンの平均よりも高い収入を得る事が可能で、そのためには独立するのも1つの方法です。独立については別の記事で書くとして、ここでは就職した直後のお金の話をします。
基本的に給料の高くないこの業界、1番最初はほぼ最低賃金です。残業代が支払われない会社もあるみたいです。労働基準法的に大丈夫なのかなという金額の話も聞いた事があります。

そしてこの業界、若くして辞める人が圧倒的に多いです。せっかく専門学校で2年間勉強して就職しても3年以内に辞める人が5割くらい。この辞めるは別の会社に行くのではなくピアノ調律関係の仕事を辞めるという意味です。1番の原因は金銭的な部分だと思います。夢見ていた仕事と現実の違いを目の当たりにして、且つ給料が低ければモチベーションは続かないですよね。
この後の適正のところで書きますが、この職業はとにかく好きでないと続きません。好きこそもののといった風に技術が磨かれて後から収入が付いてきます。

適正~どんな人が向いているのか~

色々な調律師さんと会っているとなんとなくの共通点があります。これについていくつかまとめていきます。

マニアックな性格

手に職系の職業なので職人気質ってやつですね。人がどうでもいいと感じるところにもこだわりを持つような性格が技術向上に繋がります。現実にはこのこだわりが仕事の障害になることもまれにあるとは思いますが、逆に言えばそれくらいこだわりが強くないと、音楽家の相手は色々な意味で務まらないかもしれません。

責任感、使命感

これはジャンル問わず絶対に必要です。すぐに諦めてしまう、投げ出してしまうという性格だと難しいかもしれません。第一線で活躍されている調律師さんは、みんなそれぞれ使命感を持っています。この使命感を持つにはある程度の経験も必要かと思います。

コミュニケーション能力

コミュ力です。これは仕事をする上では本当に必要ですし、独立するとなったら技術以上に必要と言ってもいいくらいです。これは営業面ではもちろん、ピアニストの要望を感じ取るといった面でも役立ちます。相手のしてほしい事、してほしくない事を感じる力です。良い結果のためには要望に応えるだけではなく、あえて空気を読まない選択をする時も。

人に喜ばれるのが好き

ピアノを通じて人に喜んでもらえるとモチベーションアップに繋がります。ピアノ調律の中には辛い仕事や、やってられない仕事も正直あります。ですが相手に喜んでもらえると元気になります。これは仕事を始めてから体験できることかもしれません。

ピアノが好きである

これは当たり前の事で、どのサイトにも書いてあるはずです。
頭のネジが1本外れているくらい好きなくらいがちょうど良いです。

まとめ

ここまでかなり長くピアノ調律師のリアルについて書いてきました。
最後にピアノの調律師を目指そうか迷っている方へのオススメは、実際に気になるピアノ調律師さんに直接話を聞くことです。今の時代はSNSなどで簡単にコンタクトがとれる時代なので、何人かの調律師さんに直接連絡してみる事をオススメします。ここに書いている内容はあくまで僕の経験が元になっています。他の調律師さんは全く別の事を言うでしょう。ですが、それぞれの調律師さんが経験されてきた事なので、言ってみれば全て真実の話です。

将来の道の選択は、人生においてそんなにたくさんあるものではないですよね。
本記事がその選択の判断材料として少しでも役に立てばとても嬉しいです。

現実を見ると調律師になりたいという人が激減しているため、専門学校もどんどん閉鎖しています。原因は「ピアノが売れてないから良い未来のイメージがない」と簡単に言ってしまえるのですが、僕は全く違う意見を持っています。
それは自分も含めた調律師という存在が高校生くらいの子供たちにとって楽しそうではない、魅力的に見えない、目指そうと思える存在ではないのが原因と考えています。もちろん裏方の仕事なのでそもそも表舞台に出ることはないのですが、少しでも調律師という職業に興味を持ってくれる人が増えるようにSNSなどを使って発信していこうと思っています。

以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん