ピアノ調律専門学校の学生さんへ

こんにちは!

自分は今ピアノ技術者としてまだまだ若造の部類にいます。

ですがピアノ調律の専門学校に入ってから早18年、今だからこそ思う学生時代もっとこうしておけばよかったという事がいくつかあります。調律師業界、そして音楽界の未来を助けていく皆さんの参考になればとても嬉しく思います。

(コロナウイルスのせいで現時点では難しい内容もあるかとは思いますが、これは一旦置いておいて書いていきます)

調律の練習は目的をはっきりさせる

学生時代カリキュラムに沿った課題をクリアしながら練習していましたが、今思えばもっと細かい部分練習を徹底的にやるべきだったなと思います。ピアノ1台を調律するようになると精度を上げながらスピードも上げていくという事が必要になりますよね。でもこの精度とスピードって実はほぼ同じ意味なんですよね。精度が上がれば勝手に短い時間で仕上げられるようになります。もちろんスピードに慣れるために1台を調律する練習も必要ですが、今日は割り振り!明日は最高音オクターブ!といったように各音域に集中して1日の中で繰り返した方が得られるものは多いと思います。

練習量に逃げない~うまくいかない時は理由を徹底的に探す~

調律の練習は、とにかく反復しながら耳と体に覚えこませることが必要です。
ですが、がむしゃらにただただ永遠に繰り返すのは時間の無駄です(経験談)。うまくいかない時は必ず理由があります。がむしゃらにやりながらもこの原因を探す事を忘れてはいけません。例えばうなりが聴きづらい原因は左手の打鍵にあるパターンが多いです。左手に原因があるのに、そこに気付かずにハンマー操作や耳に慣れさせるには時間が掛かります。

※矛盾しますが、とりあえずやってみるという事もとても重要です。納得いかない事があってもがむしゃらにやってみて、その中から気付くこともたくさんあります。

調律の時は左手の打鍵にこだわる

これは調律学校時代に先生からいつも言われていました。
そして今だにこの打鍵については研究していますし、なんとかするために練習しています。調律の練習をする時ってどうしても右手に意識が集中してしまいがちですが、鍵盤を押す左手も同じくらい大切です。

整調をする際には、原理で理解する

例えばアップライトのレットオフは右に回すと広くなって左に回すと狭くなるって最初習うと思うのですが、これだと現場に出てからとても困ります。右に回すと何がどうなって広くなるのか。こういった原理、”何が起きているのか”を常に理解する努力をする必要があります。

学校を卒業して現場に出ると、初めて見るピアノ、今まで見たことのない症状のピアノに出会うことは日常茶飯事です。こういう時に習っていないので出来ませんだと仕事になりません。よーくアクションを観察して、どこをいじると何が起きてその結果になるのか、常に頭に入れておくと対応力(ある意味最も必要な能力)が身についていきます。

1つの鍵盤での整調。

先ほどの内容と似ているのですが、音や弾き心地を感じながら1鍵の整調をする。いわゆる見本を作るというもの。これはとても大切です。

ある工程を1台分限られた時間で出来るようになる練習も必要です。学校では時間内に揃える事が重要視されると思います。ですがこの見本にもこだわってほしいです。この見本には正解はありません。
レットオフを極端に広くあるいは狭くしたらどういうタッチと音になるのか、キャプスタンを思いっきり手前に倒したら何が起こるのか、などなどどんどん試してください。極端にどこかを調整すれば不具合も起きると思います。そして先ほど書いたように原理として何が起きたのかを必ず考えてください。この経験と知識は財産になります。

このような”試す”ことは、社会に出るとなかなかチャンスはありません。お客さんのピアノで極端な事をやるわけにはいきません。学校ではこれが許されているはずですので、どんどん試してどう感じたかなどをメモしていってください。

色々な会社にどんどん見学に行く。

これは学校と現場の違いを早くから理解するためです。僕は専門学校の後にSP楽器(シュベスターピアノ)で2年間働きました。良い進路に進めたと今でも自信を持って言えますが、今思えばこれは幸運に恵まれただけの事だと思っています。

この調律師業界、就職したけど”想像と違った”という理由で辞めてしまう人が多いです。せっかく2年も学校に通ったのに、辞めてしまうなんて勿体ないですよね。そうならないためにも、早くから現場の厳しさを知るのは良いことだと思います。

若い調律師の卵が見学に来てくれたとなれば皆色々なお話を聞かせてくれるはずですし、将来のためのアドバイスもくれるはず。そして10人いれば10通りの考え方がある事を知るでしょう。調律師と言っても仕事の種類は多種多様です。どんな仕事場に自分は興味があるのか、積極的にいくつかの会社に見学に行きましょう。

また今の時代、SNSなどで簡単にコンタクトがとれる時代です。
コロナもあって見学に出向くのは少し気がひけますよね。仕事で忙しくて返信がない事もあるとは思いますが、聞きたいことがあればトライしてみる価値はあるのではないでしょうか。

自分から能動的に勉強する。

学校に通っていれば先生が教えてくれてその通り勉強すればOKというイメージがありますが、少なくとも調律師という職業にこの受け身の考えは当てはまりません。

常に自分から考え学ぶことが求められます。

以前働いていた場所に就職活動に来た学生さんが、「それは学校で習っていないので出来ません」と言いました。でもその内容は僕の行っていた学校では1年生の3か月目くらいで精度はおいといて全員が問題なく出来る工程でした。ちなみにスプーン掛けです。

仮に座学でしか習っていなくても、やり方を習ってかつ目の前にピアノがあれば試してみようかなという気持ちになるはずです。特に学校という場所は失敗が許される環境で、そこから学んでいけるものはたくさんあります。(必ず先生の許可は得ましょう!特に整音!)

教科書以外にも調律師さんの本はたくさん出ていますし、こういった本で自分からどんどん勉強して先生に質問していきましょう。自分の生徒が自ら勉強して質問してきたら先生はとても嬉しいはずです。

さいごに

ここに書いた内容は、全て過去の自分にも伝えたい内容です。もっと考えればまだまだあるとは思いますが、とりあえず今思いついた内容を書きました。

これが少しでも役に立てば嬉しいです。

以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。としさん