Q&A4、ピアノ調律師になるのに絶対音感は必要ですか?

ご質問

子どもがピアノ調律師という仕事に興味を持っています。小さい頃からピアノを習っているのですが、残念ながら絶対音感の教育をしなかったため絶対音感は持っていません。
やはりピアノ調律師になるには絶対音感が必要なのでしょうか?

というお問い合わせを頂きましたので、ここで僕の回答を紹介します。
(許可を頂いて掲載しています)

回答

結論

結論から言うと全く必要ありません。
そしてこの質問はピアノ調律師が聞かれる質問の第1位です。

「やっぱり絶対音感をお持ちなんですよね?」

といった具合に、僕たちピアノ調律師が当たり前に持っているものとして聞かれることも少なくないです。

ちなみに僕も持っていません。調律のためにひょっとすると便利な時もあるかもしれませんが、今のところ困ったことは一度もありません。
(でも持ってる人が羨ましいって思ったことはあります!)

そもそも絶対音感とは何か?という話になるのですが、とりあえずウィキペディアで調べたところ、こう書いてありました。

絶対音感(ぜったいおんかん、英語:Absolute pitch)は、ある音(純音および楽音)を単独に聴いたときに、その音の高さ(音高)を記憶に基づいて絶対的に認識する能力である。

絶対音感の現実

さて、この絶対音感、その音から音名がバシっとわかると想像できますが、実はどれくらい正確かは書かれていません。

え?正確なんじゃないの?って話になりますよね。

ドの音が鳴った時にドって言えれば絶対音感になるわけですが、問題はこのドが何Hzかという話です。

絶対音感について説明をする時によくするやりとりがあります。

僕「トマトって何色ですか?」

お客さん「赤ですかね。。。」

僕「絶対音感の精度ってこんなもんです。」

お客さん「・・・?」

大体こうなります。

赤っていっても色々な赤がありますよね。

濃い赤もあれば薄い赤もあって正確に言えば無限にあるといっていいはずです。

実は音も一緒です。

ピアノ調律師に絶対音感が必要ない理由

調律を始める時に最初にとるラの音、この時点で440なのか442なのか443なのか442.5とかの指定が入る時もありますし、なんなら440でも440.1、440.05なのかと測れば測るほど無限にあります。

細かく測ればもちろんキリがないですが、絶対音感の人のおそらく90%の人はこのラの音が440Hzか442Hzなのかはわかりません。

ちなみに僕は単音だと音名すらわかりませんが、聴き比べればかなり細かい精度で聴き分けることが出来ます。

この聴き比べるという部分がポイントで、調律師に必要な能力はこの音を比べる能力、「相対音感」です。

調律師に必要な能力~相対音感とは~

2つ以上の音を出した時に、この関係性が成立しているかどうかを聴く能力です。

オクターブだったり、ドミソの時です。

この関係性も絶対的な数値はあるのですが、ある程度の幅が許されています。オクターブで言えば少し広め(高音を高く、低音を低く)、あるいは反対に狭めに調律することです。

1台のピアノの中ではこの関係性が一律に揃っていることが重要です。例えばド→ドのオクターブは広くてレ→レのオクターブは狭いと、結果的に3和音などのオクターブ以外の和音が揃わないことになります。

ピアノを弾く人の好みに合わせて、調律師さんはこのオクターブの幅を変える事があります。その際にはオクターブの幅を揃える事によって和音も成立するように調律していきます。このためには絶対音感程度の精度は全く役に立ちません。

そして最後にお伝えしたいのが、この”相対音感”はトレーニングで身に付けることが可能です。調律学校に入ると、毎日の調律練習で鍛えることになります。

さいごに

最後にもう一度書きますが、ピアノ調律師になるのに絶対音感は必要ありません。シチュエーションによっては「自分の感覚からズラす」ことをしなくてはいけないのでむしろ持っていない方が良いと個人的には考えています。

お子様が調律師という職業に興味をお持ちという事で、一ピアノ調律師としてとても嬉しく思います。過去に”ピアノ調律師になるには”という記事を書きましたので、こちらも参考にして頂ければと思います。

https://www.toshisanblog.com/category/piano/tuner/become-a-tuner/

以上になります。
読んで頂きましてありがとうございました。としさん