オーストリアのピアノの先生に”脱力”について聞いてみました。

こんにちは!としさん@津久井俊彦です!
横浜を拠点にピアノ調律師やってます♪

ウィーンで普段子供を教えているオーストリア人のピアノの先生に「脱力」について質問してみたところ、レッスンのポリシーなど興味深いお話を伺うことができました。

日本ではピアノを弾く際の”脱力”についてよく議論されています。この脱力についてオーストリアではどのように考えられていますか?

以下先生の回答になります。

「もちろん身体の細かい筋肉や関節について知ることはとても意味がある事です。これらの知識は私たちの演奏を大いに助けてくれます。

ですがこの脱力は目的であってはならない。まず表現すべき音楽があり、そのための表現したい音があり、目の前のピアノと空間の響きを感じながら弾き方を変えないといけません。音楽の明確なイメージ、音色のイメージがない状態で筋肉の使い方や脱力を意識する事は意味がないと私は考えます。

あえて言えばこの”脱力”という状態は様々なシチュエーションに合わせて、自分の表現したい音楽のために弾き方を変えられる身体・筋肉の状態とでも言いましょうか。

そしてこの弾き方は人それぞれの体格や骨格によって全く違うものになるという事を忘れてはいけません。もちろん基本形はありますが、子供1人1人筋肉の付き方も個人差があります。大人も同じですが、子供の場合は体の発達というものがあるため、物理的にこの基本形が合わないという場合もあります。

弾き方について私がレッスンする際には、生徒の弾き方を見るのと同時にどんな音が実際にピアノから出ているのかを聴き、どんな表現をしたがっているのかを本人に聞きながら、“音楽”を中心に弾き方を変えさせています。この時もなるべく本人に考えさせるように、例えば“手首の力は抜きながらここには力を入れてこう弾きなさい“というような具体的な教え方は絶対にしません。見本を見せながら手首の力の抜き方のヒントだけ教えて、その時に出た音にどう感じたか、これが自分が表現したいものに対して合っているかなどを本人と対話をしながら指導しています。この時、手首を固めた時の音も表現によっては必要になるという事も必ず伝えます。これはピアノを始めたばかりの小さい子供でも同じです。

こうやっていると、子供はたくさんの色で絵を描きたがるようにピアノでも自分の音をよく聴くようになり、弾き方を工夫しながら色々な表現をしたがるようになります。もちろん青い太陽を描くように楽譜の記号を無視したり、音符を足すような生徒もたまにいますが、この時も絶対に否定せずに本人になぜこう弾いたのかを問いかけながら自分の意見も伝えます。

この繰り返しで少しずつ座り方や肘の位置、椅子の高さを変えてみたり、大きくなってくれば筋肉や関節の話も出しながら弾き方のヒントを与えていきます。こういった部分については年齢に応じて理解出来るかどうかを考えなくてはなりません。始めたばかりの子供には、鍵盤の手前や奥を弾いたりするというような簡単なヒントでもいいでしょう。指のテクニックに関しては、もちろんそのためのトレーニングもありますが練習さえしていれば年齢と共にある程度身についていくものです。

私がレッスンで最も気をつけている点は、音楽という絵を描いている生徒たちから絵具の色や筆を取り上げないこと。そしてたくさんある色や筆、あるいは石ころや葉っぱを貼り付けるでもいいでしょう。これらの画材を本人がすぐに取り出せるようにしてあげることです。このために「脱力」という考えも必要になるでしょう。

子供の”音楽”の表現力は無限大です。これを“弾き方”によって制限することだけは絶対にしてはなりません。ただ今まで1人だけ足で鍵盤を押した生徒がいて、その時はさすがにもう2度としないように!と注意しました。」

さいごに

最後にオチをつける感じがオーストリア人っぽいですね。

調律の際に伺った話でしたが、とても興味深い話でした。たまにものすごい弾き方のピアニストがいるのも、こういう考え方で小さい時から教わったからなのかもしれません。

「音色や弾き方にこだわり過ぎると音楽が見えなくなる」
とも仰っていました。

チャンスがあれば他の先生にも話を伺ってみようと思います。

音楽に限らず、学校教育などもきっと違うんだろうなぁと思います。確かに数学の公式とか覚えて人生何になるんだろうって思いながら勉強していましたが、オーストリアだとどんな教え方するのかとても気になります。
そういえばつい先日調律に行った時に10歳の男の子が算数の宿題をやっていてその内容が「答えが10になる計算式を20個考えて、そのうちのお気に入りを1つ選んでこの計算式について10分プレゼンをする」というものでした。
答えを求めるのではなく、答えへどう辿り着くか。そして10分プレゼン。
外国で仕事をするとこういった話も聞けるのでなかなか面白いです。

以上になります。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。 としさん