ウィーン音大教授とピアノの先生に聞いてみた⑧としコラボVol.2-8

こちらの動画を文字にしたものです。

M:マティアス・トラクセル教授
C:カルメン先生
T:としさん

楽譜にはフォルテ、でも生徒はピアニッシモで弾きたがっています。なんと言いますか?

M:まず「どうして?」と質問を投げ掛けてみます。

そう言うからには本人にアイディアかイメージなど必ず理由があると思います。

C:その後にフォルテとピアニッシモを両方試させて、それからどちらがなぜ良いのかなどをもう一度聞いてみます。「ダメだよ、フォルテとあるじゃないか」と言った風には私は言いません。

M:私も同じですまずは両方を試してみること。そしてその理由を一緒に探します。

C:もちろん「ただこの方が好き」と言うかもしれません。ですがこの場合も、何が良いのか、なぜそう感じるのかなど、私はもっと深く質問していきます。

M:ここで少しレベルの高い話をしましょう。

強弱については色々な考え方があります。フォルテはいつでも「強く弾く」という意味ではありません。軽く弾くフォルテというものもありますし、大きく豊かな響きで弾かないといけない“p“も存在します。

それはまた音楽的に何が表現されているのかによって変わってくるものです。このことについては色々な見方が出来ると思います

音楽のキャラクターによって、強弱記号の持つ意味は全く別のものに変わってくること。書かれた強弱記号を、内側(音楽の内部)から理解する必要がありますこれはとてもレベルの高い話です。

譜読みが苦手な生徒への教え方を知りたいです。

C:オーストリアでは楽譜を読む勉強をしたくない子どもが増えています。何が理由かはわかりません。

例えば左手がいつも同じ動きをするような曲を使うことによって、私たちが思っているよりゆっくりですが、いつかは楽譜を読めるようになります。

ですが私たちの時代より時間が掛かるようになっているとは思います。これは本当に難しい問題で楽譜を読みたくない子どもがとても多いのです。

YouTubeで音楽を勉強する子どもたちもいますよね。それは良くないことだと私は思いますが、ただピアノ教師としてどうやってこういった生徒たちと向き合うかをよく考えなければいけません。

楽譜を読みたくないけれども音楽を学びたい生徒には、音楽を聴くところ、つまり聴き取りやリズム、フレーズから入っていけるかもしれません。

逆に楽譜だけを見たい生徒もいて、彼らは音楽を忘れてしまいます。

楽譜と音楽、この両方が繋がっている必要があると思います。

M:曲が難しくなると楽譜を読む必要がどうしても出てくると思います。

日本の事情はわかりませんが、オーストリアでは努力する意思が欠けてきている子どもが以前より少し増えている気がします。それだとあるレベル以上にはいけません。

C:例えば楽譜なしではバッハのフーガは弾けません。

M:楽譜は読まなければならないものなのです。もちろん3,4歳では難しいですが、いつかは楽譜を読みたくなる時がくるでしょう。

C:意思さえあれば本当に早く読めるようになります。その時は本当にあっという間です。

生徒から「どうして練習しないといけないの?」と聞かれたらどう答えますか

C:私はこれを聞かれたことはありません。大体生徒は自分から練習していないことを言いますし、練習無しでうまくいかないことは自分でも理解しています。

M:私の学生たちはもちろんたまには練習が足りてない状態でレッスンに来ます。その時私は、「先生のために練習する必要はないんだよ」と伝えます。

彼らは彼ら自身のために、自分の意思によって練習しているんです。

C:小さいこどもたちにとって大切なことは、練習したら何が起こるのかを自分で気付くことです。

練習しなかったらうまくいかないことはわかっていますが、練習してどこまでうまくなるのかまではわかっていないことが多いですからね。一番大切なポイントは一度本当にしっかり練習して、その違いを自分で体験することです。

感想

今回の1つ目の質問は実は僕からの質問でした。まさかのとても深い話が聞けましたね。

譜読みについては、子どもによって読めるようになる方法は全く違うもので、メソッドのようなものは無いとの事でした。

3つ目の質問の答えは個人的には印象的でした。「練習しないと上達しないよ」ではなく「練習したらどこまで上手くなるか知ってる?」実際聞くこともあるそうで、なんとなく前向きなイメージがありますよね。うちの子どもでもそれを言われた方がやってみようという気になりそうだななんて聞きながら考えていました(^^)

あと数本で終了です!最後までよろしくお願いいたします!

読んで頂きましてありがとうございました。
としさん@津久井俊彦