ウィーン音大教授とピアノの先生に聞いてみた⑦としコラボVol.2-7

こちらの動画を文字にしたものです。

M:マティアス・トラクセル教授
C:カルメン先生
T:としさん

日本でピアノを学ぶ子供は、諸外国の子と比べ、演奏に「意思がない」としばしば言われます。「何かを表現したい」という気持ちを育てるために何か特別なことをしているのでしょうか。

M:それはおそらく教師の指導というより日本の文化によるものではないでしょうか。

C:日本でどういう教育がされているのかわかりませんが、私は習い始めの時から子どもにいつも質問を投げ掛けないといけないと思います。

どう思う?なんだと思う?この曲は何?作曲家は何をイメージしてる?これは楽しい曲?悲しい曲?というようにです。そうすると生徒は常に自分が弾いている曲について「考える」ということをするようになります。

最初から「こう弾きなさい」と指示だけしていると、生徒は自分の考えを持てなくなってしまいます。

M:先生が見本を見せるのも良いでしょう。基本的には子どもは真似をしますから。

とにかく何かをいつも強制することはいけません。それは彼らにとって負担になりかねません。それよりは教師自身が良い見本になれば自然とその気になるものです。

C:何かを言われることに慣れてしまうと、言われたことしかしなくなってしまいます。

M:もちろん子どもが何か質問してきたらそれを大事にして先生はしっかりと答える必要があると思います。

T:日本にいた時に調律先で子どもに何か弾きたい曲ある?と聞いたら「先生に聞かないといけない」と言われたことも確かにあります。

C:先生の頭の中には確かに次の曲についての考えはあります。ですがその曲以外にも曲はたくさんありますね。私は自分の生徒には何か弾きたい曲はないかをいつも聞くようにしています。「これも良いし、こんか曲もあるよ」といった風にです。

どのように指導したら音楽の楽しさや美しさを伝えられるような指導できますか?また生徒の性格やその子の良さ、個性を引き出すにはどのように指導するべきでしょうか

C:これはとても簡単なことです

小さい子どもにとっては習い始めた時から音楽をすることの喜びを持つことが必要です。なぜならば誰しも13歳くらいで辞めたくなる時期がくるからです。

こういった時期に、ピアノを習い始めの時にその喜びを持った子どもたちは、この難しい時期を乗り越えることが出来ます。ですが、これは先生にとってもちろん簡単ではありません。

特に曲選びはとても大切で、いつも生徒それぞれの成長に合う曲を見つけないといけません。

これは技術的に合うかどうかだけではなく、内容面も含めてその子どもに合うかどうかがとても大切です。

M:子どもが大きくなってきたら曲の音楽的な質も、曲選びの際に重要になってきます。

生徒の好みや感性も成長していかなければなりません。良い作品であることは最も大切なことで、それは人間的な成長にも繋がります。

楽譜通りにただ弾く事から一音一音を大事に歌い、考えて弾く段階に進む時のタイミングと指導方法

C:もちろん1番最初からです。

M:それを分けるのは間違いだと思います。音楽と演奏技術はいつも関係性を持っていないといけません。これによってひとつひとつの音符まで理解することが出来ますし、イメージすることも出来るようになります。

C:最初からこの繋がりを意識させれば、子どもたちは機械的に弾くよりも間違いなく、より楽しく演奏してくれると思います。

M:技術的な土台を作ってから音楽という古い考えではうまくいかないと思います。部分的には解決できることがあったとしても、それは音楽的な面から見た時には解決とは言えません。

なぜならば技術的なことと、音楽的なことが1つになっていないからです。

これを区別するのはとてもリスクがあることです。

感想

今回の3つの質問はインタビューの中で返ってくる答えはなんとなく予想は出来ていたので聞こうか迷ったところもありましたが、お二方ともちゃんと向き合ってくださるので聞いてみました。

2つ目の質問で曲選びが大切という事で、実際の例なども含めて具体的な質問もしてみたのですが、子ども一人一人本当にみんな違うからここで答えるのは難しいとの事でした。つまりはそれだけ違う曲・楽譜を使うんだなと改めて思いました。

3つ目の質問は僕のドイツ語の問題もあって最初伝わりづらかったみたいです。言われてみれば当たり前の事で、料理をする時に、味見せずに野菜を1cmに切る練習なんてしないですよね。この例えが合っているのかはわかりませんが、大切なのはあくまでも音楽という事でした。

動画はおそらくあと2~3本です。最後まで頑張ります!

読んで頂きましてありがとうございました。
としさん@津久井俊彦