生活の響きが音楽文化をつくる〜日本とオーストリアの部屋の音響の違い〜

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日本とオーストリアの部屋の音響の違い

ヨーロッパに滞在しているときに、いつも最初に感じるのが 「部屋の響きの違い」 です。同じピアノを弾いても日本とオーストリアではまったく違う楽器に聴こえてしまうことがあります。それは気候や建築の違いによって生まれる空間の音響の違いが大きく関わっているというお話です。

日本の部屋は「音を吸う」

日本の建物は、昔から湿気の多い気候に合わせて作られてきたと言われていて、木材、畳、障子、壁紙といった素材が湿気を吸う事で夏の生活を快適にしてくれます。しかしこれらの素材は湿気と同時に、音も吸収してしまう特性があります。

試しに手を叩いてみると、音は文字で書くと「パン!」だと思うのですが、実際には「パッ!」だと思います。

こうした音響は、日本人が大切にしてきた「静けさ」や「余白」の文化にも通じていますし、生活の中で音が響かないことは、むしろ落ち着きを与えてくれるような気もしています。

オーストリアの部屋は「よく響く」

一方オーストリアやドイツでは建物の作りがまったく違っていて、石材や漆喰、硬いフローリングやタイルが使われ、空気の乾燥も相まって音が吸われません。そのため普通のリビングで手を叩いても「パンッ!」と音が跳ね返り、その反射音がしばらくお部屋に残響として響きます。
ピアノを弾けば和音も勝手に広がって、ちょっとしたホールのような残響を感じることができます。オーストリアでは特別な音響設計をしなくても、日常の部屋そのものが「響く空間」になっているのです。

音響環境と音楽文化のつながり

日本とオーストリアの生活音響の違いは、そのまま音楽文化にも表れているように思います。

  • 日本:響きすぎない静けさを好む文化。
  • オーストリア:響きそのものを楽しむ文化。

同じピアノでも置かれる空間によって「全く別の楽器のように聴こえる」。この事を調律師として改めて日々実感しています。

まとめ

日本とオーストリアの部屋の響きの違いは、単なる建物の素材の違いではなく、気候・生活習慣・文化の積み重ねによるものです。そしてその違いは、音楽の聴き方や感じ方に大きな影響を与えているかもしれません。

「音楽の都」と呼ばれることもあるオーストリア。その理由の一つは、コンサートホールだけではなく、生活の中のお部屋の響きに隠れているのかもなんて思った今日この頃です。

読んで頂きましてありがとうござました。
としさん@津久井俊彦